【“彼”の憂鬱 1/2】
同じ里にいても、そうそう上忍に都合よく会える訳ではない。結局、ネジも、カカシ先生も不在だった。なにか有益な情報を得たら連絡すると約束し、バキと別れたシカマルは、その足で火影邸へと向かう。テマリとの任務の時間だ。いつもなら心弾むその時間も、今日は地獄的に憂鬱な気分で過ごすことになるんだな、シカマルは、ため息を漏らす。あれからどこへ消えたのか、テマリからの連絡はない。ただ、火影邸へ来ることは確実なのだから、嫌でも顔を合わせる。
執務室の隣、控え室のドアを開けたシカマルは、目に飛び込んできた光景に不快感を隠せなかった。まるでバキの情報を裏付けるかのように、ネジと歓談しているテマリの姿。
「奈良」
何事も無かったかのように声を掛けてきたテマリに、いつも通りの反応すらできない。自然と寄る眉間の皺も、自分で想像しているよりずっと深く刻まれているはずだ。
「じゃあ、ネジ。またな」
「ああ」
(・・・またな?)
何気ない会話も、深読みをしてしまう。
「先に、書庫の鍵を頂いておいた。・・・シカマル?」
周りに誰もいないことを確認して、テマリは呼び方を変える。2人の関係が切り替わる合図。普段のシカマルであれば、反応も違う。けれど今日に限っては、“奈良”と呼ばれるほうが、マシな気分になっていた。
「なに」
この感情的な声が、己の発したものであると認識する脳が、わずらわしい。
「なにって、さっきから苦虫を噛み潰したような顔、してるぞ」
からかうように自分の顔を覗きこんだテマリに、ますます厳しくなる表情。けれど当の彼女は、シカマルの不機嫌さの原因が自分にあるなど、露とも思っていない様子だ。
「どうした?・・・あ、バキ先生のことか?悪かったな、ちょっとあの人は過保護すぎて」
暢気にそう言って、ドアの鍵穴に手元の鍵を差し込んだ。
「お前とのことをいろいろ詮索してくるから、慌ててしまったんだ」
笑みさえ浮かべる彼女に、無性に腹が立った。
「俺のことだけじゃ、ねぇだろ?」
声音の鋭さに驚いて振り返るテマリに、シカマルは、それを、口にする。
「他にも、いるんじゃねぇの?」
「お前、何か誤解していないか?」
眉を寄せるテマリの姿が、ふてぶてしくも見える。
「正直に言えよ」
中途半端な逢瀬に、余韻を残したままの状態で耳にした、恋人の浮気疑惑。そして、その疑いの色を濃くするような、光景。真偽も定かでないのだからと、わずかな理性が囁きかけるが、すぐには消すことの出来ない嫉妬という炎が、全身を覆い、まともな思考すら、焼き尽くそうとしていた。
「話に、ならないな」
鼻を鳴らして背を向けたテマリを、シカマルは書庫へと押し込んだ。乱暴にドアを閉め、後ろ手で鍵を掛けながら、テマリの身体を壁へと押し付ける。抵抗するように伸びてきた腕を掴んで、拘束した。
「おいっ」
「俺を、妬かせようとか、思ってんの?」
「は?」
非難めいた視線に、シカマルは怒りを煽られ、勢いのままキスしようとすれば、テマリは顔を逸らす。そのしぐさにムッとして、強引に唇を奪った。彼女の顎を下へと引き、無理やりこじ開けた隙間から、舌を忍ばせる。
「・・・んん・・・」
息苦しさを訴えるテマリに気づいても、、無視をする。そのうち、乱暴な口づけに戸惑っていたテマリの舌先も、抗うことを止め、従順に絡まりあう。それを見計らって、顎から首筋に流れたシカマルの手のひらは乳房で止まり、いつもより強めに摩り始めた。布地越しからでもその形を確認できるほどに、頂が姿を現す。
「シカ・・・マル。ここじゃ、まずい」
「まずくねぇよ」
「人が、来たら、どうする?」
壁一枚向こうは、廊下。
「瞬身したら、いいだろ?」
昼間、テマリが囁いた台詞を、そのままシカマルは繰り返した。
「冗談はよせ。ここは、火影邸内だぞ?」
諌めるような口調に、白い肌に舌を滑らせていたシカマルは、一旦動きを止め、ゆっくりと顔を上げる。
「だから?」
挑発的な口調に、テマリの背が震えた。
「・・・今は、任務中だぞ」
「そんなの、今更、だろ?」
口端に笑みを浮かべながら、シカマルは素早く忍服の合わせ目から手を忍ばせ、直に、乳房に触れる。頂を指の腹で軽く摩れば、テマリの口からはたまらず甘い息が漏れた。
「あんたが、派手に声をあげなきゃ、いいだけだろ?」
「そんな・・・こと・・・あっ・・・」
愛撫に崩れるその腰を支えながら、シカマルの唇が、頂を吸う。片方の乳房もその姿を顕にされ、五本の指が襲い掛かる。口に含まれた頂は、舌先に弄ばれ、歯を立てられて、鋭い刺激を与えられているのに、指の動きは、じれったいほど緩慢で、その相反する感覚に、テマリの身体は狂わされる。嬌声が漏れぬよう、何度も指を噛んだ。
シカマルは、任服の裾を捲り、テマリの腿に自分の足を割り入れる。腿に触れたモノに、テマリの興奮も高まる。硬く、熱く、今にも突き立てられるのではないかと思わせるほどに、なっている。そうさせたのは自分なのかという優越感と、それが与える快楽を望む、自分。その証のように、迎え入れる秘部は、下着を濡らすほど感じていた。それを確かめるように、シカマルの指がつぅっと割れ目を辿る。全身の細胞が刺激され、一斉に弾ける様な感覚が、テマリの身体を突き抜けた。
「はぁっ」
漏れた声にはっとする。どのくらい響いたのか。と、同時に感知する、人の気配。微かに耳に届く声は、見知った人物たち。
『いの、夜、時間あるか?』
『なによ?』
『カン兄が来てるだろ?合コンしないかって』
『合コン?いいわよー、暇だし』
(山中・・・と犬塚?)
声は近づいてくる。