『起きないあいつの、起こし方






目覚まし時計に目をやれば、
もうそろそろここから離れなければいけない時間。
耳元で囁くあいつの寝息は生々しく、
とてもすぐに目覚める様子は無かった。

「シカマル、起きろ」

私の胸元に乗せられた腕を軽く抓る。

「・・ん・・」

シカマルは、寝息とも、声とも区別のつかない音を発しただけだった。

「・・・ったく」

ため息混じりに、あいつの腕から逃れ、私は身を起こした。

身支度に時間がかかるのは私のほうだ。
昨日は帰宅も遅かったのだし、もう少し寝かせておいてやろう・・・、
そんな気持ちで寝室を後にした。

シャワーを浴び、着替えを済ませ、再び寝室へと戻る。
その間、かなりの時間があったように思うが、
シカマルは、猫のように体を丸め、まるで私を抱くように、
布団を両腕に挟み、未だ規則的な寝息を繰り返している。
その傷のない背中を、ポン、と叩いた。

私の手の冷たさと、軽い刺激に反応して、あいつの肩が揺れる。

「・・・何時?・・・今・・・」

気だるそうに腕を上げ、半身をこちらに向けた。
ぼんやりとうつろな瞳は、まだ覚醒していないようだ。

「もうすぐ7時」

私の声に、しばらく視線を泳がせていたが、

「・・・あと10分」

消え入るような声を出して、再び瞳を閉じた。

「おい。」
「テマリ・・・頼む・・・」

甘い声で、懇願するようにそう言って、
私の返事を待たずに瞳は閉じられる。

・・・ったく。仕方ない。

本人は起きていなくても、起きている場所が、あるだろ?

私は、そっと手を忍ばせた。

ほら、やっぱり。ここだけはしっかりと主張している。

固く膨張しているモノ。それを掌で包むように、ゆっくりと摩り始めた。
固さを増すにつれ、布地も張ってくるのが解る。

「・・ん・・んん・・・」

私は、ボタンを外して、狭い入り口からソレを引き出した。
根元を支え、頭の部分に口付ける。
舌先を尖らせて、形を確かめるようになぞり、
少し浮き出た筋に、指をすばやく滑らせた。
明らかに、寝息とは違う息遣いが、頭上から聴こえてくる。
そそり立つモノを舐め上げながら、そっとシカマルの顔に目をやる。

眉を寄せる悩ましいその表情が、私は好きだ。
もう起きているくせに、私に気づかれまいと必死に耐えているその顔。
・・・だから、ますます意地悪をしたくなる。

口に含んで、頬を窄めながら、上下する。時々、軽く歯を立てながら。
シカマルの身体が激しく反応し、手が私の頭を軽く抑える。
感じる部分に触れると、合図のように、きゅっと髪を掴む。

荒くなる呼吸、身じろぎ。

・・・わかる、近いんだ。

私は口を離し、顔を起こした。

切なげにこちらを見るシカマルと目が合った。

「起きただろ?」

口元を歪ませる私を睨んで、

「・・・このままかよ」
そうじゃねぇよな・・・とでも言うように、ぎゅっと腕を掴むシカマル。

その手を払いのけようとして、シカマルに力のまま、組み敷かれた。

「もう時間だぞ」
「そりゃ、ねぇだろ?」
「知るか」
「こんなになった、責任取れよ」
「起きないお前が悪い」
「すぐ、終わらせるから。な?」

抵抗する私に構わず、キスをしてこようとするあいつの顎に、下から手を当て、
いつも枕元に忍ばせているクナイを向けた。


「いい加減にしろ。」
「・・・マジかよ・・・」

そう呟くシカマルの顔を見ていたら、少しだけ、気持ちが動いた。
それを振り払うように、クナイをそのままに身を起こし、シカマルから離れた。

「自業自得だ。自分でなんとかしろ」

我ながら、ひどいことを言っているな・・・と思いつつ、
このくらいのことを口にしないと、流されていまう私もいる。だから・・・。

「自分でって・・・あの・・・、俺ら、一応、新婚なんじゃあ・・・・。」

後ろ髪を引くようなシカマルの声を背に、ドアノブに手を掛けた。

仕方ないだろ?
もう任服も着てしまったし、化粧と、乱れた髪も直さなくちゃいけないのだから。
任務の時間は待ってはくれない。

仕掛けたのは私だけれど、それは起きないお前が悪いんだから・・・。

いろんな言い訳を、心に吐いて。


「・・・続きは、夜、な。」

ひとこと言って、ドアを閉めた。



end

2008.1.14 webclap ss
es-pressivo/Riku

Photo by FOG.

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本館の方で頂いたバトンで思いついたネタでした。


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