甘いものは好きじゃねぇけど、それだけは別だ。
その花の蜜は、俺にとっては特別で、鮮やかな色と強烈な香りに引き寄せられ、存在を感知をすると、飛んで行っちまう。

誘われるままたどり着いた先には、開花を迎えるその花の持ち主が、凛とした姿で佇んでいる。

滑らかな葉が花を守り、細い茎は鋭い刺を容赦なく向ける。
だから俺は、その周りを飛びながら、最大限の美辞麗句をならべ、彼女の自尊心を刺激して、かすかに葉を揺らした瞬間、その隙間に潜り込む。

花はまだ、固く閉じたままだ。
驚かせないように、薄桃色の花被にそっと触れる。葉が、俺の頬を撫でた。焦らす様に葉を甘噛みして、反応を確かめる。

花被が少し緩んだ。
指をその端に当てて、重なり合う花弁を静かに開いていく。まるで彼女の唇のような花びらが、姿を現す。すぐにも口づけたくなる衝動を抑え、形を指で確かめるように、何度もなぞる。花弁はしっとりと濡れて、俺の指をその奥に飲みこんでしまいそうだ。柔らかく温かいその感触に、やはり我慢が効かず、唇を落とした。

「やっ・・・」

拒否しているのに、漏れる声は甘い。
これから口にする、蜜の甘さを連想させるには、十分すぎる。
俺の鼻を刺激する香りも、濃さを増した。蜜腺から少し溢れた液を舐め上げる。
葉が、俺の頭を締めつけるように巻きついてきたが、構わない。
一滴も、こぼしたくない。

もう少し、花弁を広げてみる。そこに現れる固い花芽。
蜜腺を刺激する、一番の場所だ。指で掠めるだけでも、葉も、茎も激しく揺れる。それ以上の侵入を防ぐように、花被も慌てて花芽を守ろうとする。

無駄だろ?本当は、そこに触れて欲しいくせに。
けれどその面倒くさい抵抗が、俺の雄性を煽る。乱暴に押さえつけて、花芽に口づけた。

「ぁあ・・・んっ・・・」

舌先で突いたり、きつく吸ってみたり。堪え切れなくなった彼女の、切なく甘い声が響き渡る。それがますます、俺の舌の動きを激しくさせる。
彼女の意識が、花芽の刺激に持っていかれている間に、俺は花弁を掻き分けて、柱頭に何度も触れる。蜜腺から止め処なく、甘い蜜が溢れ出てくるのがわかる。その証拠に、俺の指は抵抗なく、するりと花柱へと招かれた。蜜を掻きだす様に、行き来を繰り返してみる。その動きに呼応するように、茎も再び揺れ始める。葉にも滴るその液体は、艶かしく光っている。

たっぷりと蜜が絡みついた指を抜き出し、うつろな彼女の瞳の前にさらした。
彼女の羞恥心を煽るように、自分の口に含むような仕草をしてみせる。

「・・ちょっ、馬鹿」

気だるそうに、けれど、慌てて身を起こし、俺の腕を掴もうとする彼女に、

「俺の好物だから、邪魔すんなよ」

満足気に俺は、その指の、蜜の味を堪能する。

「ふ・・ん。指だけで満足なのか?」

これが、この花を育てている彼女の恐ろしさだ。
紅潮した頬、潤んだ瞳で、そんな風に俺を挑発してくる。

「・・・何が欲しい?」

彼女は口づけながら、俺を抱き寄せ、そのまま横たわる。

「・・・お前の毒針」

耳元で囁かれる、ぞくりとするような低い声。そのしなやかな蔓が、すでに俺の針を捕らえていた。
毒針ねぇ。ひでぇ言われよう。
でも、悪くない。それを彼女は欲しがっているんだから。

「何回、刺して欲しい?」
「ん?私を痺れ尽くすまで」
「欲張りな女だな」

彼女の瞳が妖しく光る。

「私が欲しがるんじゃない。私の花が、甘い蜜を作る為に、美しく咲く為に、お前の毒を欲しているんだ」

俺の針を、その身に深く飲み込もうとしながら、そんなことを口にする。意地の悪い言葉を、それ以上口に出来ないように、一気に激しく突いた。俺の下で、その花弁を散らしてしまうのではないかと思うくらい、彼女は乱れる。

「・・・っ、なあ」
「・・んっ・・?」
「他の虫を、そんなに誘いたいのかよ?」

彼女の言葉と、乱れる様があまりに扇情的で、同時に蠢く花柱に意識を持っていかれそうになって、一旦動きを止めた。花柱が、それを非難するように、飲み込んだ針をきつく締め上げる。

「・・・その蜜を口に出来るのは、お前だけだ。咲く花を目にすることができるのも・・。 ・・ふぁっ・・んっ・・」

憎らしくて、憎らしくて・・・、たまらなく愛しい女。

子房に届くまで、針を突き刺す。茎がしなり、葉が小刻みに震える。

そして、大輪の花が、俺の目の前で、開花する。

2007.8.13
es-pressivo-Riku



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