ココは、彼女の聖域。

それを今夜、犯した。


『Shower booth 2』



彼女は嫌がる素振りは見せるが、後ろから攻められるのが嫌いなわけじゃない。

むしろ、背後を取られるという危うさに、興奮が高まるようだった。

「ずるい・・・」

そんなことを口にしていても、誘うように長い首をしならせ、挑戦的な視線を向けてくる。

それに応える様に俺は、首筋に舌を滑らせ、同時に柔らかい乳房をゆっくりと揉みしだく。

指先が、ぴんと張った乳首を掠めると、彼女はしなだれるように俺に身を預け、白い首を仰け反らせた。

指の動きに合わせて、上下する小さな喉仏。微かに開いた唇から、吐息交じりの鼻にかかる声。

そこへと指を忍ばせ、上顎を指の腹で丁寧に撫でてやると、彼女の舌が悶え始める。

蛇のように俺の指に絡みつき、その動きはまるで、俺自身を舐め上げるような連想を誘う。

そうやって彼女は、俺を扇動しながら、自ら溺れることを望むのだ。

淫らに、大胆に、自分を散らす。



彼女の背に唇を落としながら、口腔内を犯していた指を抜き取るとそのまま、ボディーソープのボトルへと伸ばした。

ぬるりと掌に零れてきた白い液体は、まるで、白濁のようだった。

それをこれから彼女の全身に塗りつけるかと思うと、奇妙な高揚感が生まれてきた。

「なに?」

「身体は、まだ洗ってないんでしょ?だから」

拒否の言葉はお約束のようなもので、俺は構わず両掌に液体を広げ、彼女の背に当てる。

背中から、首筋へ、そして、両脇から腕を差し入れ、乳房へと滑らせる。

ただ、撫でるだけ。掌で、ゆっくりと、螺旋を描くように。そして決して乳首には触れないように。

もどかしく身じろぎする彼女の耳朶を甘噛みし、ふっと息を吹きかける。

くすぐったそうに首をすくめ、そのまま首を捻り、俺を非難するように瞳を光らせた。

そして、乳房を這い回る俺の指に、自分の指を絡め、俺が触れない先へと導こうとする。

・・・そんな誘いにはのらないよ。

俺は、彼女の指から逃れ、臍のほうへと掌を滑らせた。

ぬるぬるとしたこの感触に、彼女の感度も興奮の度合いも、いつもにも増して、高まっているようだった。

焦らすようにわき腹へと逃れ、腰骨を確かめるようにゆっくりと掌を移動させ、臀部へと下降する。

「ね、片足を上げて」

細い腰を支えるように手を添え囁くと、彼女は素直にボトルの並んだ棚へ、つま先を掛けるように足を上げた。

秘部には触れぬまま、けれど腿の付け根には丁寧に指先を何度も滑らせた。

その度に彼女は、もどかしい俺の所作に反応する蜜壷を収縮させるように、腿に力をいれる。

それに気づいていても、今はまだ、触れてはやらない。

そのまま内腿、膝の裏、脹脛から、足首、踝、つま先まで、緩慢な速度で撫で下ろす。

そして、脛から膝、キュッと締まった腿を通り、再び付け根へと戻る。

左手を添えた腰は揺れ、彼女の肌は微細に震えている。

小指の先を微かに秘部の方へと滑らせると、ボディソープとは明らかに違う、ぬめりを感じた。

一旦右足を戻させ、今度は左足を同じように上げさせる。

潤滑油のように使っていたソープなど必要ないくらい、そこは蜜穴から溢れた愛液で濡れていた。

身体を彼女の背に押し付けるように密着させ、彼女の臀部の割れ目に、俺自身の滾ったものをあてがった。

同時にびくりと身体を震わせる彼女の肩に顎を載せ、

「すごいね、ただ身体を洗っているだけなのに」

からかうように囁く俺に、彼女はぎゅっと、腰を支える俺の右手を抓る。

そして、そのまま俺自身に触れ、

「あなただって、こんなに硬くさせているくせに」

挑発するように、答えた。その指先の微細な力加減の誘惑と戦いながら、

「そこは、まだダメだよ」

余裕を見せるように微笑んで、彼女の左足を丁寧に洗い始めた。

「・・・あ・・・」

指や掌が触れる箇所に、眉根を寄せてなまめかしく応える彼女。

秘部からは、溢れ出た愛液が彼女の腿を伝い、俺を誘う。

ああ、堪らない。

「まだ、洗ってないところが、あったね」

秘部へと指を到達させると、彼女の身体が大きく震えた。

「ココは、ソープがいらないくらいだ。」

彼女をからかうつもりだったのに、俺の息もあがり、切羽つまった声になった。

それほどに熱く、そして俺の指を迎え入れる彼女の蜜壷。

我慢が効かずに顔を覗かせている蕾を、指の腹で摩りあげる。

「ああっ・・・んぁ・・・あ・・・あ・・・」

掠れた彼女の声が、こだまする。

指を深く飲み込んで、収縮する蜜壷を掻き回し、その度に悶える様に、俺自身の滾りも大きくなる。

もう少し密着すれば、その先には充分に熟れた果実が待っている。

彼女の臀部も角度を変え、まるで導くように腰を揺らしている。

そこに沈めさせたい衝動を抑えつつ、シャワーの栓を開いた。

俺のいつもの悪い癖だ。どうしても彼女に言わせたい言葉がある。



今夜、この空間で。

彼女がいつも、俺の存在を断つ為に篭る、この場所で。

シカマルを心に想いながらも、結局身体を許してしまうことを責め、

罪悪感に苛まれながらも、俺に身を堕とす彼女自身を、この場で見たい。

好きなように攻めたて、たまらず漏らすあの掠れた悲鳴を、何度も響かせたい。

この征服欲を満たす、彼女の言葉を。

ここで、聴きたい。







「終わったよ」

彼女の肢体に湯を流しながら、こちらを向かせる。

「・・・ずるい・・・」

紅みを帯びた目尻が、縋るように俺を見ている。そして再び漏れたその言葉。

言葉にされなくても、十分解っている。俺は、ずるい男だ。

彼女が抑えようとする欲望を、じわじわと追い詰め、揺れる心に乗じて引きずり出す。

「・・・なにが?」

鼻先が触れるほどに顔を近づけ、その唇に指を滑らせる。

ほら、言って、この場所で。

そしたら、逃げ場を失くしたキミの身体に、しっかりと刻んであげるよ、俺という存在を。

幾度もね。

そうしてキミはそのまま、俺の部屋で、あの寝顔を見せればいい。

今夜は、帰すつもりはないから。




彼女の唇が、ゆっくりと動き始めた。


end

2008.2.24
espressivo-Riku


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